「The Bee ロンドンバージョン」(シアタートラム)
さて、7月17日火曜と18日水曜、そしてまた25日水曜、とThe Beeのロンドンバージョンを観劇した。
懐かしき1年前のロンドン初演はプレビュー期間のみだったので、あらたに思い出すところ、気づくところが多い(基本的にはまったく同じ演出の踏襲)。
相変わらずのキャサリンの怪演は何度観てもすごいが、日本での公演を意識してなのか、公演を重ねて解釈が定まったのか、演技のディテールの説得力が実に細かくわかりやすく伝わってくる。ひとつひとつの表情、仕草から目が離せない。グリンのオゴロとイドの息子役の早変わりや、アンチョク刑事のコミカルさも磨きがかかっている。
野田さんのオゴロの妻は、ロンドンで観たときはもう少しフェミニンな弱々しさが全面に出ていたように思えたが、今回はあえて女らしさを強調せず、迫力で押してくる演技に思えた。ロンドン初演、日本版を含めて、はじめて、オゴロの妻が、完全に狂ってしまったのだ、と思わされた演技だった。クロスジェンダーで象徴化されながらもリアリティのある演技と渾然一体となった、いままでにない不思議な世界を作り出しているといえる。
初演より進化したロンドンバージョン。ふと「最高傑作」か?との思いがよぎる。
この復讐の連鎖によって自らを滅ぼしていく修羅の世界を、演劇として描いたことは意味があると思う。映画やテレビでリアルな映像で見せてしまっては、むしろそうした黒い思いを観ている側に植え付けてしまうおそれがある。しかし、こうした象徴化された表現の中で、唐突に「理由無き悪」が描かれることによって、一種のシャーマニズムのように、世の中の「悪」を代行し、昇華させているのではないか。そんなことを夢想してみた。
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