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2006/08/25

野田地図ロンドン公演"The Bee"詳細報告1(野田ML投稿文章)

6月に観に行った野田秀樹の英語新作、ロンドン初演の"The Bee"ですが、劇評としては「マガジン・ワンダーランド」第4号にまとめてしまったので、帰国直後に野田秀樹メーリングリストに報告として投稿したメールの文章をここに転載しておきたいと思います。まずは舞台内容について、の文章その1。

舞台は、長方形で、オレンジ系の透明なアクリルっぽい感じの表面です。ところどころに電話や計算機、靴、バットなどの小道具が、半分沈むようなかっこうで埋められています。多分畳の部屋をイメージしているのでしょう。こたつのようなテーブルがひとつ、壁際に置かれていて、そこにもオルゴールや赤鉛筆などが置かれています。

背景は鏡ばりで、開演前に客席に座ると自分の姿がぼんやりうつります。しかしこの鏡は半透明で、後ろに廊下くらいの幅の奥舞台があり、ここでの演技も照明の加減によって、見えたり見えなかったりします。この背景に貼付けられたようにテレビや、ドア、納戸口、ラジオなどが平べったく模してあります。

で、この鏡が三面鏡の鏡を平行にして間に首を突っ込んだ時に見えるように、えんえんと鏡像がたくさん奥まで連なって見えるのです。多分奥舞台にも鏡の背景があり、表舞台の鏡の裏面も鏡になっており、合わせ鏡の鏡像が、透けて見えているのだと思うのですが、これ、そうとう面白い、と同時に、イドがたてこもるオゴロの妻の家には、不似合いな大きな三面鏡があるということになっていて、それともつながるし、さらに、脅迫と復讐の限りない応酬となるこの話を象徴的に示しているともいえます。

まずいきなり舞台に、三つ揃いのスーツを来た小柄なキャサリンが現れ(カーテンコールで4人並びますが野田さんよりキャサリンは小さい)、独白をしますが、すぐに、警官たちがゴムひもで立ち入り禁止線を作りながら入ってきてイドを囲みます。このゴムひもは、テレビーレポーター(なぜかいつもNHK)のマイクのコードになったり、警官たちが現場で食べるおそばになったり、と活躍します。転換、暗転などがいっさいなく、イス、ゴムひも、バット、茶碗、どんぶりなどを使って作る野田さん得意のパターンです。

主役のキャサリン以外の役者さんは、複数の役柄を瞬間に切り替えて演じるRedDemon方式です。特に、グリン・プリチャードは、ドドヤマの部下のアンチョク、オゴロ、オゴロの息子、TVレポーターの四役を切り替えて見事に演じます。トニー・ベルは、ドドヤマとレポーターとキングオブシェフ、野田さんは、レポーターとオゴロの妻です。ただし野田さんは途中で女装になるので、そこからは役は変わりません。

役の切り替えで面白かったのは、大きなロール紙の筒に帽子をかぶせて、子供に見立てているのですが、アンチョク役のグリンがバットで打たれ気絶し、家の外に運ばれる時、靴だけを脱がせて運んで行き、残ったグリンは筒から帽子をかぶり、子供に早変わりするのです。ここでは、ほおーっと感心するため息が聞こえたときもありました。

このロール紙ものちに、切り落とした指を入れる封筒の素材になったりと活用されて行きます。

「愉快なロンドン」の歌は、イドをオゴロの妻の家に送る車のなかでアンチョクが歌います。アンチョクは原作とは違い、かなりマッチョで、スティーブマックイーンにあこがれる下品な警官として描かれています。子猫をひいても平気で、通りかかった女性に「いい女だぜ〜」と声をかけるような下衆な感じがよく出ていました。

それにしてもロンドンの芝居でキャバレーロンドンの歌を歌わせるとはホントによくやります。。。ある意味まさに70年代の日本ですが。(この芝居の時間設定は明らかに1974年とされています。)

「蜂」ですが、「ズズズズ」という飛んでるときの音(英語ではそういう感じで表現するのでしょうか)を野田さんが口でやったり、効果音になったりしますがとにかく音だけで表現しています。劇中に三度現れるのですが、最初は、オゴロの家にイドがたてこもった直後。

この作品ではイドは蜂を異様に怖がる男として設定されています。蜂を茶碗のなかに閉じ込める(実際はオゴロの息子がなにげなく入れてしまうのですが)ことに成功すると彼は狂気のように喜びラジオから聞こえて来るハチャトリアンの「剣の舞」のパロディソングに合わせて踊り狂います。この「剣の舞」は日本語の歌詞がついており男性によって歌われている曲なのですが、私は聴いたことがありませんでした。客出しにも使われていました。

(MLに投稿後、管理者のさわらさんよりレスがあり、この曲は、「剣の舞」歌:尾藤イサオ、作詞:なかにし礼、とのことでした。歌詞は以下の通り。昔野田さん出演の番組で流れたことがあるそうです。

好きか嫌いか 嫌いか好きか
はっきり言いなよ 今すぐ目の前で
惚れてしまえば 男は弱い
奴隷か騎士か 囚われ人の身か
それに較べて お前は素敵
ペルシャの女王か トルコの姫君か)


二度目に蜂が茶碗から出てしまったときは、イドはピストルで蜂を撃ち落としてしまいます。この時も同じ曲で狂喜乱舞。そして最後に、自分の指を切り落とそうとしたところでもう一度蜂の音がたくさん響いて、暗転。

The Beeはなんの象徴なんだろう、と考え込んでいます。恐怖心というのが一番近いのかもしれませが、何に対する恐怖感なのか。あるいは良心の声ともとれなくもないです。蜂を殺すことによって、イドは犯罪者としての自分を確立して行く。いくつかの劇評が指摘していましたが、蜂は刺すと自分も死んでしまうわけだから、イド自身のテロリズムの象徴ともいえます。

長くなったので分けます(つづく)。

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