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2005/11/30

『赤鬼』韓国バージョン 観劇レポート(1)

(すでに一ヶ月以上たってしまったけれど、レポートをあげておきます。とりあえずその1として。)

野田秀樹が小劇場に帰ってきた。

そんな印象を持つ公演だった。ソウルの大学路(テハンノ)。小劇場の林立する学生街である。会場は文芸振興院芸術劇場小劇場。四角く白い土俵のようにもりあがった舞台を囲む、雛壇の客席。南北は4段、64席ずつ、東西は3段48席ずつ、合計224人分。下北沢でいえば、駅前劇場くらいの規模であろうか。

観劇日:10月14日(金) 19:30開演、10月15日(土)15:00開演、10月15日(土)19:30開演
上演時間:約1時間40分程度(休憩なし)
ソウル 文芸振興院芸術劇場小劇場

現地でのチケットの値段は2万4千ウォン。約2400円だ。こんな劇場、こんな値段で俳優野田秀樹を観ることはもはや日本では不可能だろう。『赤鬼』初演(1996年)の渋谷パルコパート3がこのくらいの規模だっただろうか。そういう意味では原点に戻った『赤鬼』ともいえる。(ぴあで購入した日本でのチケット価格は5000円。ただし会場で出演者全員のサイン入りパンフがもらえた。)

客層も若く、女性がかなり多い。ちょっと驚いたのは15日の昼間の回に子供を膝の上に乗せた男性がいたこと。小学校低学年くらいに見えた。最前列なので膝の上からすべりおりぐねぐねとしている。最初はやたら声をあげて野田演じる赤鬼に反応していたので大丈夫かと思ったが最後の方は静かに観ていた。こ小劇場演劇を子供と見に来くる人がいて、なおかつ入場が許されるというのは日本とは事情が違い、驚きである。

野田の赤鬼に対して3人の村人役(韓国人俳優)が役柄を瞬時に変えながら物語を紡いで行く4人プランは日本バージョンと同じ。赤鬼のコスチュームはタイバージョンの亜流のように思える、片目が白く濁り、髪ぼさぼさ、全身コスチュームの出で立ち。しかし大腿部や肩のあたりが異様に膨らみ、醜さは増しているように思える。タイバージョンのコスチュームが黒と赤が基調になっていたのに対してこちらは白と赤の虎縞模様のようになっている。今回の演出では赤鬼が日本人、村人が韓国人という具体化した設定がなされるのではないか、との前評判もあったが、蓋を開けてみるとそんなことはなかった。

のだが、筆者はこの赤と白の赤鬼コスチュームの色合いに日本国旗の色合いを連想し、赤鬼が日本人として発想された痕跡を感じてしまったのだが深読み過ぎであろうか。

ただ、この白が今回のアクセントカラーになっているのは確かである。ロンドンバージョンでは村人がみな赤い衣装をつけ、昨年のタイバージョンでは、村人は白い衣装に、赤い髪紐など、赤のアクセントがついており、この赤は、村人たちもまた「赤鬼」(「人を喰う」存在)であることを象徴していた。今回はこのアクセントが白になっていたと思われる。フク(あの女)は髪に編み込んだ白い紐、とんびとミズカネは片耳を白く塗り、手首や足首に白い紐を巻いていた。三人の衣装は、薄茶の麻袋のような素材でできており、ミズカネがピンク色の帽子(柔らかい布地でできたハット)をかぶっていて、これが小道具として様々に生き、ミズカネのキャラクターをよく出している。今回のミズカネはおしゃれっぽい伊達男の側面が強かったのではないか。赤鬼が食べる花も透明なセロファンのようだったがかすかにピンク色がかっていた。

白い舞台にはたくさんの竹を差し込む穴があいており、ここに何本もの長い竹をさしこんで、場面を表現していく。竹は単独で使われる他、二十本近くの長さの違う竹をパンフルートのようにまとめたものも、これは家の戸になったり、フクの乗る小舟になったりする。単独の竹は、漂流物をたぐる棒になったりもするが今回面白いと思ったのは、慎重ほどもあるたけが、浜に打ち上げられた人間になったり、赤ん坊にさえなったりしたところである。竹をかかえて俳優が自分の口でおぎゃ、おぎゃとやるシーンはユーモラスだ(赤鬼にさらわれる赤ん坊はタオル地のような布でできた人形だったが)。竹がなげられたり打ち付けられる時の音は激しく、暴力的な感じがする。原初的な激しさの印象を与えていたと思う。その他この舞台は下からのライトで、大小たくさんの円形に光る部分があり、洞窟の絵が発見されるシーンでは暗いなかでそこが光るようになっている。重要なシンボルでもあるガラス瓶は、舞台の端の斜面になっているところにいくつか仕込まれているだけで、他のバージョンのように舞台美術のポイントにはなっていなかった。後半の裁判のシーンでは、縄でつながったたくさんの瓶が竹の柱にくくりつけられる。

劇中に使用された音楽は各バージョンと似たもので、あの感傷的なメインテーマも健在である。いくつかの場面では打楽器の激しい響きを含んだ新たな音楽が使われていた。(つづく)

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