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2005/10/11

ギンギラ太陽's 『翼をくださいっ! さらばYS-11』

「かぶりもの」を売りにしているという、福岡で活動する劇団、ギンギラ太陽's初の東京公演である。どのような縁なのか、PARCO劇場という、どちらかというと商業演劇系の劇場への進出。しかし自分としてこのくらい快適な劇場でゆったりとこういう小劇場系の芝居をまあまあの値段で観ることができてうれしい。

観劇日 10月7日金曜日 午後7;00開演
上演時間 約1時間50分(休憩なし)

まず開演前の記念写真タイムが面白い。開演10分前くらいに突然西鉄バスのかぶりもの軍団が現れ、客席に乱入して携帯カメラでの撮影を促す。最初はとまどっていた観客も次第に撮影に興ずる。ひとしきり撮影タイムがあったあとに、携帯電話の電源を切るお願いである。そうか、みんな携帯電話を手に持っているから、しまう前に電源を切ろうという気になるよな。うーん、うまい。こういう効果的なやり方があったか、と驚く。

そして開演。初日のためか、多少手違いもあったが、すぐにテンポよい展開になる。役者が演じるのは、JALやANA、そして主人公のスカイマークエアラインズといった飛行機。パイロットのような衣装と頭に飛行機のかぶり物をつけての熱演。他に福岡、佐賀、長崎空港などが登場する。こちらもビルのかぶり物をかぶった役者さんたち。いかにもマンガチックだ。

1998年にたった一機の飛行機で東京福岡路線に半額運賃で参入したスカイマークエアラインズをめぐる各社の鞘当てと各空港の思惑による虚実入り交じった(と思われる)ストーリーに、戦前、日本初の国際空港として出発し、特攻隊の出撃をも見送りながらいまや廃止となり格納庫のみ残っている鷹ノ巣飛行場と国産機でありながらいまや日本では飛ばなくなったYS−11のエピソードなどが絡み、息をつかせぬ展開の2時間で、気楽に楽しく、また単純なストーリーではあるが心の中で涙を流しながら観た。

もちろんコミカルで笑いが絶えず、劇団の人気キャラらしき「ひよこ侍」が現れたりと荒唐無稽ではあるのだが、背景には戦前から戦後、現在にまで至る航空業界を中心とした日本の経済史が押さえられていて、それらを改めて顧みることができる。年配の方がむしろ楽しめる内容かもしれない。普段から福岡の人にしかわからない演劇を作ってきたとの言葉が、作・演出大塚ムネト氏のカーテンコールでの挨拶にあった。しかし今回の演目は東京福岡間の航空路線を扱っていることもあり、東京の人間にも入りやすかったのではないだろうか(それにしても佐賀空港の扱いはあそこまでやって大丈夫なのだろうか、ちょっと気になった。まあ、はなわが受ける時代だから大丈夫か)。

私自身は、福岡路線を何度も使っているとともに、以前の教え子の一人がスカイマークエアラインズのキャビンアテンダントになっていることもあり、ここでとりあげられている事情には以前から興味を持っていた。そのため、初々しい新規参入のスカイマーク君のけなげさが、なんともいじらしく、入れ込んで観ることになった。

それにしても航空機とは、戦争であれ、経済であれ、人間の欲望と夢を一身に象徴する最新テクノロジーのかたまりであって、大空に飛ぶ航空機の歴史はまさに人間の果てしない夢を象徴しているのだ、と改めて感じた。だからこそ、飛行機がかぶりものになって擬人化されるとき、滑稽さだけではなく、共感をも感じることができるのではないだろうか。こうした素材を、演劇作品化した作者の慧眼は素晴らしい。

途中一カ所だけ戦後の占領時に残った戦闘機が焼却処理される実写の映像を入れたのも効果的。かぶりもので演じられることによって、飛行機が人格を持ったものとして印象づけられている故に、燃えてしまう飛行機の映像がより痛ましく感じられる。また各場面での照明もたいへん美しかった。俳優もキャラクターがたってオーバーな演技だが安心してみられる。

最終部、スカイマークの一号機の到着場面が、戦後の航空路線復活である金星号の到着場面と重ね合わされて終わるのだが、できれば、冒頭の黒字化したスカイマークも含めてアップデートな現在まで戻ってきてほしかった。劇中で語られる三社競合はいまやJASがJALに統合されて様変わりし、さらなる新規参入会社も現れている。激動の航空業界のその後を描いた続編も期待したいところだ。

ちょっと最近の東京では観られないユニークなタイプの芝居を渋谷という利便の地で観ることができ、いつもの演劇への批評眼も忘れて、ただただ単純に笑い、涙してしまうという、ひさしぶりの経験をすることができた。
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PARCO劇場 ギンギラ太陽's 公演「翼をくださいっ!さらばYS−11」

公演日程
2005/10/7(金)〜10/10(月・祝)
作・演出・かぶりモノ造型 大塚ムネト
出演
大塚ムネト/上田裕子 上野亜由美 北川宏美 古賀今日子 杉山英美 立石義江 田中慎一郎 中島荘太 中村卓二 吉田淳 新田玄 林雄大 他

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