アートネットワーク・ジャパン+Ord-d.dプロデュース『サーカス物語』
東京都心部では少子化のため小中学校の廃校が多くなった。そうした廃校が交通の便の比較的良く、安価で規模の大きな施設として、様々な文化活動の拠点として利用され始めている。「にしすがも創造舎」は豊島区の旧朝日中学校。芸術文化活動を通して国際文化交流の促進を目的とするNPO法人「アートネットワーク・ジャパン」が主に演劇の稽古場として運営している。
観劇日 10月8日(土) 14:00開演
上演時間 約2時間(休憩なし)
『モモ』や『果てしない物語』で知られるミヒャエル・エンデが遺したいくつかの戯曲のうちのひとつが、この「にしすがも創造舎」で上演された。「サーカス物語」。建築現場の空き地に残ったサーカス一座の面々。なかには知恵おくれの少女エリもいる。サーカスはすでに解散しており一座は近くの工場の宣伝活動をするかどうか決断を迫られている。工場に雇われるにはエリを施設に入れなければならないのだ。
やがてピエロのジョジョが、エリにせがまれて語る「お話」の中に舞台は移る。エリはここでは「鏡の国」の王女、ジョジョは「明日の国」のジョアン王子である。二人は恋をするが、大蜘蛛のアングラマインによって国を奪われた王子は地上に追われ、王女もまた王子を求めて不死の身を捨てて地上に降り、二人はお互いを知らぬままサーカスの一座に加わる。
体育館の中に組まれたセットは、空間の広がりを生かし、鉄パイプで高く組み上げられ、物語の大枠である、サーカスの跡地の寂れた雰囲気を良く出している。音楽は生演奏。しかし劇場として作られた空間ではないので、一部マイクを通しても声が通らず聞こえにくいのは残念。
演出が全体的にやや地味で、特に冒頭のサーカス一座からファンタジーの世界への転換までのテンポがいまひとつ。出演者がサーカスショーの技を披露するところも比較的地味だなあと思っていたら、セリフで「今はもっと刺激的なものにみんな慣れてしまってこんな芸には見向きもしない」と言われてはっとする。自分もまた現代メディアの様々な刺激に慣れてしまったクチであった。
王女の愛の力によって最後は自分の王国「明日の国」を大蜘蛛から取り戻す王子。善悪二元論といい、昔話の構造そのものといい、いかにも理想的で単純。ある意味陳腐とも思える。が、最後に枠である建築現場に話が戻り、工場との契約書を破った芸人たちに、クレーンや機械の轟音がせまるところで暗転。この演出が強調した苦い結末は、むしろ現在への問いかけとしてふさわしい。愛と創造を賛美する物語を語っていた劇中の芸人たちでさえ、本当はとうの昔に消え去ったサーカスショーの幻影に過ぎないのかもしれないのだから。
廃校に立ち上げられた「創造」と名のつく施設での、廃されたサーカスと「創造」の物語。現実の場と物語の意味のリンクを、身を以て体験することは、演劇の醍醐味のひとつである。「創造」は「明日」を切り開けるのだろうか。
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アートネットワーク・ジャパン+Ord-d.dプロデュース『サーカス物語』
2005年10月7日(金)〜10日(月・祝)
にしすがも創造舎特設会場
原作 ミヒャエル・エンデ
翻訳 矢川澄子
演出 倉迫康史(Ord-d.d)
キャスト
あきやまかおる
綾田將一(reset-N)
伊澤勉
石川正義(ク・ナウカ)
市川梢
沖田みやこ(のこされ劇場≡)
小田さやか
笠木誠
金子由菜
小林紀貴
さとうまりこ
平佐喜子
谷口直子
堂下勝気(怪童堂)
凪景介
三橋麻子(Ort-d.d)
宮光真理子
村上哲也
村島智之
渡辺麻依
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