« こまつ座『小林一茶』 | トップページ | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ第三弾『冬物語 -Barcarolle-』 »

2005/09/22

自転車キンクリートSTORE『ウィンズロウ・ボーイ』

1940~50年代にイギリスで活躍した劇作家、テレンス・ラディガンの3作品を俳優座で連続上演する「ラディガンまつり」の1作目。スケジュールの関係で行けないかと思っていたのだが、たいへんよいと観た方からおすすめもいただいたので、なんとか時間をやりくりして、入る。

観劇日 9月17日(土) 18:30開演
上演時間 約3時間(10分の休憩含む)

最初は入りがよくなかったらしいが、この日は満席、補助席も出ていた。まず舞台美術(島次郎)が気に入った。シンプルで陰影のくっきりした室内。壁がイエローで統一されていたのも美しい。演出が燐光群の坂手洋二氏なのだが、燐光群の翻訳劇とは違って、いかにも翻訳劇臭い人物造型で、アジア系の人間が金髪にして、洋装をまとい、西洋人を演じる不自然さがどうしても気になった。

が、弁護士モートン(大鷹明良)が登場するあたりから、彼の迫力ある演技と展開の面白さに引き込まれ、一気に作品世界にひきこまれた。こういうのはひさびさの体験である。

第一次世界大戦直前のロンドン。ウィンズロウ一家の次男ロニー(渋谷圭祐)が海軍兵学校の寄宿舎で、盗みの疑いをかけられ、退校となる。これを不服とした父アーサー(中嶋しゅう)は、学校に抗議し、世論に訴え、財産を切り崩して裁判に持ち込む。婦人参政権運動の活動家である長女キャサリン(馬淵英里何)、オックスフォード大学に在学しながら学業に身が入らない長男ディッキー(佐藤銀平)、母グレイス(中田喜子)他周囲の人々も否応なく騒動に巻き込まれ、その人生を変えて行くことになる。

とにかく話の展開が面白く、引き込まれる。終わってよく考えると、結局はみんないい人だった、めでたしめでたし、に近い理想主義的な内容なのだがそれをしらじらしく感じさせないうまさがある。俳優もそれぞれにキャラクターが際立って、演技も秀逸。特に私の印象に残ったのは、母を演じた中田喜子。少しとぼけた味わいを出しながら、上品で愛に満ちたイギリス夫人の雰囲気がよく出ていた。特に声が良い。大高明良の弁護士も圧巻。最初は冷たい理詰めの人間に見えながら次第に人間性があきらかになるあたりをうまく演じていた。父中嶋しゅうも一貫して無骨な感じで通し、安定感がある。私の好きな、馬淵英里何は、いままでに演じたことのない、インテリの女運動家のイメージを出すのに苦労していたように見えたが、健闘していたし出番がかなりあるのによくこなしていたと思う。

結果長丁場を飽きずによく楽しめた。ただ、坂手洋二の演出作品と思うと、燐光群の問題劇を見慣れているせいか、少し社会問題に対しての見方が深められていないのが物足りなく感じてしまった。これは戯曲を選んだ時点で仕方ないことでないものねだりかもしれない。「ラディガンまつり」の残り2作も観たくなってきた。
-----------------------------------
自転車キンクリートSTORE「テレンス・ラディガン3作連続講演
訳 常田景子
演出 坂手洋二
出演 馬渕英里何 大鷹明良 中嶋しゅう 中田喜子 大石継太 西川忠志 田岡美也子(グループる・ぱる) 佐藤銀平(演劇集団円) 渋谷圭祐 荻原利映(グリング) 藤本浩二

|

« こまつ座『小林一茶』 | トップページ | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ第三弾『冬物語 -Barcarolle-』 »

「演劇」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/15869/6059335

この記事へのトラックバック一覧です: 自転車キンクリートSTORE『ウィンズロウ・ボーイ』:

« こまつ座『小林一茶』 | トップページ | りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ第三弾『冬物語 -Barcarolle-』 »