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2005/07/04

『うら騒ぎ ノイゼズ・オフ』(新国立劇場)

途中どうなることか、と思った新国立劇場の「シリーズ笑い」だが、最終作で大団円という感じだ。白井晃さんの演出は最近、アーティスティックな小難しい芝居が多かったが、喜劇でも才能を十分に発揮されていた。なかにはいくらなんでも笑いすぎ、と思われる観客もいらしたが。

観劇日 7月1日(金) 19:00開演
上演時間 2時間35分(15分間の休憩含む)

Noises Offは、イギリスの劇作家マイケル・フレインが83年に書いたバックステージもので、日本でも何回も上演されているとのこと。しかし『うら騒ぎ』は、今回の上演に際しての新しい翻訳題である。「うら」という語にいくつかの意味がかけられているようでもあり、なかなか深みを感じる題名だ。

客席にはいるとそれぞれの座席に「ナッシング・オン」という芝居の出演者紹介のパンフがおいてある。出演者は役者の実名だが、紹介文は、うそっぱち。めちゃくちゃだ。端の方には小さな字で「ほとんどうそです」との意の但書がちゃんと入ってはいるが。この「ナッシング・オン」(「何事もなし」という題名からして内容と真逆でおかしい)という芝居の初日前夜、日付を過ぎようとする時刻に通し稽古をしている座組。

白井氏は、劇中の「演出家」として客席真ん中に作られた「演出家席」で稽古を見守る。「役者」と「スタッフ」もすべて、現実の名前で呼ばれる。「さわださん」「いまいくん」「はるかちゃん」という具合だ。どれだけ原作と変えているのか、実際の役者の方々の実生活をも想像させるような虚実入り交じった会話で、すでに会場は大受け、暖まるのが早い。劇中劇の方も、ドタバタ喜劇ではあるが、ちゃんと作られていて、これはこれで楽しめるようになっておりそちらでも笑いが起きる。しかしながら、主役の「さわだ」と「いまい」がつきあっていて、さらに演出家の「しらい」はスタッフの「たにむら」と女優の「いがわ」の両方に手を出しているのがお互いにばれてしまう、など稽古の遅れ以外にもトラブルだらけ。酒好きの老優もセリフや出のタイミングがおぼつかない。なんとか稽古を終える、ここまでが一幕で休憩。

休憩後すぐに席を立たないほうがよい。二股がばれた「演出家」が窮地に陥るところがみられる。幕前に現れて「しらい」を睨む「いがわ」。そこに「たにむら」も。休憩後も早めに席に戻っていたほうがよい。ここでも少し。このへんの作りがたいへんうまい。特に二幕からは演出家席が空くので、白井氏がそこに座りたい人を募り、座らせてくれる。この日はZ席に座っていた女性二人が元気よく手を上げて、ディレクター席をせしめていた。Z席料金で二幕から特等席だから悪くない。ちなみにたしかD3列中央くらいだったかな?

二幕が空くと舞台は180度回転したカタチで舞台裏の装置となっている。公演期間も中盤の地方公演という設定。一度は座を離れた演出家も手を出した女優を心配して現れる。観客は一幕を見ているので、表の劇がどんな話だかもわかるし、舞台裏で起こるさまざまなトラブルが、緻密に劇の進行と絡んでいることがわかる。しかしかなり展開が早いし至る所でネタが進行しているので、自分はついていくのが精いっぱい。どこか一ヶ所だけ注目していればもっと笑えたのだろうが、あちこち観てしまうので、ただただこの劇作の構成のすごさと出演者の熱演に圧倒されてしまった。

三幕は千秋楽の設定。転換があるが、休憩なしで、また白井氏が客席に現れ、森塚さんや羽場さんと場をつなぐ。老優役の森塚さんは刮舌もよくなく、ぼそっと話すのだがそれがまた味でもある。でも後ろの方は聞こえたのかな? 幕が上がると今度は一幕のように表舞台になっている。千秋楽の舞台はもうめちゃくちゃ。小道具も壊れるし段取りも何もあったもんじゃない。これをなんとか繕おうとして悪戦苦闘する出演者たち。

とにかく非常によく計算されて作られている緻密な戯曲を、虚実をあいまいにするうまいアレンジで演出している。フレイン+白井晃の勝利だ。白井氏はあらためて力のある方だな、と感じた。(ちなみに『アルトゥロ・ウイの興隆』木曜マチネを見に来ていらっしゃった。余裕?) 出演者もバランスがとれた演技力。すべてのキャラクターが生きていた。

新国立劇場公演記録

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緻密な作劇で有名なマイケル・フレインの喜劇だが、只のドタバタで終わるはずがない。 その上、今回演出を担当をし、自ら演出家役を演じるのが白井晃と来れば、観劇前から何かやってくれそうな期待が増してくる。 舞台は3幕構成である。客席の椅子の上には劇中劇『Nothing On(何事も無し)』のプログラムが置かれていて、キャスト紹介がされている。それによると、今回のプロダクションの配役は実名で出ていることが判明する。 例えば、「演出家」はS... [続きを読む]

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