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2005/07/13

『LAST SHOW ラストショウ』(パルコプロデュース)

長塚圭史作・演出作品、出演者の顔ぶれの良さで期待はしていたが、期待にたがわず、すごかった。衝撃的な内容ではあるが、作中のいくつかの出来事が、いかにも荒唐無稽で、かえってコミカルで現実離れしているため、深刻になりすぎないし、死・消滅というかたちであれ、救いが用意されているため、心に食い込んで消えないが、後味が悪過ぎることもない。

観劇日 7月11日(月) 19:00開演
上演時間 約2時間(休憩なし)

冒頭のシーン(地方テレビ局のスタジオ)を除くすべてのシーンは、若いディレクター(北村有起哉)とタレントであるその妻(永作博美)の住まいである。この部屋の周囲は機械を思わせるセットで覆われており、それは、そのマンションの窓から見える近さにある、放射性廃棄物処理場をイメージしているのではないかと思われる。(追記:これってプラモデルのキットのイメージなのですね。他の人のレビューを読んではじめて理解しました。)その処理場は地域の社会問題化しており、ディレクターは本当はその追及を番組にしたいのだ。この廃棄物処理場の近くという設定が、全体のストーリーに終末的な影を与えるとともに、背景として大きな意味を持っているのではないか。

社の方針により、怪しい動物愛護家(古田新太)のドキュメンタリー番組を作らされるディレクター。たまたまその男が妻の古くからのファンであることから、ディレクターの自宅でのインタビュー収録となる。しかしその前日、行方不明になっていたはずのディレクターの父親(風間杜夫)がこの家に現れる。幼い時に母親と離婚した父親は、天涯孤独となっており、自分が不幸になったのは息子の存在のためだと思い込み、息子を不幸にしようとやってきたのだった。

ディレクターの同僚カメラマン(中山祐一朗)と動物愛護家が翌日、マンションにやってくるがすでに父親は息子を別の場所に監禁し、妻を苦しめようと脅していた。妻のマネージャーと偽る父親。しかし嘘はばれ、次第に修羅場と化していく。しかしさらにショッキングなのは、動物愛護家がその狂気じみた本性を次第に現すことである。(グロいのに弱い人はこのあたりからきつくなる。)

父親と愛護家の狂気が重なり、妻にまさに危機が迫ろうという時、思いも寄らぬ存在が現れ、急展開となる。それにしてもこれには本当に驚いたが、その存在を演じる市川しんぺーが、風間杜夫と古田新太に説教をくらわせるところでは、「よくいってくれた」と溜飲が下がる思いだった。あまりにアブノーマルで「黒い」論理の応酬にこちらの価値観さえぐらぐらしていたところだったので、実にほっとした。とともに笑った。

それにしても、単にショッキングというだけではなく、カニバリズムは、現代演劇にしばしば現れるテーマではあり、それがこの作品にも響いていると考えることも出来る。最終部で、不可解にもディレクターが死んだ父親にしようとすることも、あまりに「純粋まっすぐ君」だったこの男が、まったく違う価値観で父親を愛そうとしたということかもしれない。登場人物は誰もが狂気じみていたが、このディレクターだけがまともだったというのではなく、いかにもうさんくさい動物愛護家を信じきっているようなある意味ではまわりの見えない男なのである。その男がアブノーマルな側に振れ切ったということの意味は深いはずだ。

ただしこの物語の中心であり要である妻は、最後まで狂気をはらむことはない。これは女性存在であるからということでもあるがそれと関係して、とんでもないものを生み出したわけであるから、別の意味でアブノーマルだったともいえる。

あるいは、廃棄物処理場の放射能が、そもそもこれらの人物、特に動物愛護家のアブノーマルな習性を生み出したとも考えられないか。やはり最終部に近く、爆発音が起こり、廃棄物処理場の事故が暗示される。放射能が漏れ、この登場人物たちは(すでに死を選んだ者もいるが)遅かれ早かれ死に絶えるのであり、犯罪者や事件の関係者として重い生涯を生きていく者はいないのだ。その意味で作者は全てを消滅させる設定を与えており、自分にはそれがなんとも優しく思えた。様々な意味で用意周到である。

いずれにしても長塚圭史は今絶好調だと感じさせるに足る、非常に印象的な作品だった。役者もそれぞれ語ればきりがないほど良く、全体のバランスも絶妙であった。今、観るべき芝居である。

パルコ劇場ページ

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