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2005/06/01

『箱根強羅ホテル』(新国立劇場)

新国立劇場は会員先行発売で余裕でチケット確保できるので、油断していたら、先行期間にも関わらず、ソールドアウト。その後いくつかのプレイガイドの先行もアウト。こういうことは珍しい。ミュージカルで人気の高い内野聖陽人気だろうか?  まあ新国立は当日券もあるからいいや、と思い、機会をうかがっていたが、前日何気なくプレイガイドに電話すると1階の最後列席が出ていたので即ゲットして入場。実際隣りの席も3席空いていた・・・。

観劇日:5月28日(土)13:00開演
上演時間約3時間(20分の休憩含む)

遅筆堂を号する井上ひさし氏の新作ということで脚本の遅れが心配されたようだが、果たして、仕上がりはぎりぎりだったらしい。パンフレットには折り込みで「作者の言葉」が入っており、脚本執筆遅れのお詫びが書かれていた。確かに二幕のうち、一幕目はテンポよく、脚本も充実しているように思えたが、休憩をはさんだ二幕目は、公演も中盤に入ったせいか、セリフの不安定さなどはなかったが、脚本にどうしても不満が残る。もうひとつ踏み込めていない気がするのだ。仕上がってそれなりに井上芝居らしく終わっているのだが・・・

終戦直前、昭和20年4月の箱根強羅ホテル。ここに一週間後、ソ連大使館が疎開してくるという。実は、和平交渉をソ連に仲介してもらおうとの外務省の意向である。その準備にと、急きょ従業員が集められるのだが、そこには本土決戦を主張する軍部のスパイたちが紛れ込んでいた・・・(というか結局男性全員がスパイであるうえにその他にも・・。)

また、在留ロシア人子弟に日本語や音楽を教えているロシア人ハーフの山田智恵子(麻実れい)が腹違いの弟、国枝(内野)に再会するというエピソードが絡みつつ、観客は当時の歴史状況を理解していくと言う流れになる。軍部が、まるでばかばかしく現実味のない本土決戦案(湘南海岸にマムシをばらまく作戦計画など全て実際に考えられたことだというのには驚く。)を主張するが、憲兵である「検索官」坪井(藤木孝)は、アメリカや中国に亡命政府案があることを示し、アメリカ軍が上陸した時点で、日本は分裂する、と説く。中立条約を根拠にソ連が和平の仲介役になってくれるだろうと信じていた外務省の加藤(辻萬長)もそれが幻想に過ぎないと気づく。

井上流音楽劇も、今回はバンドがオケピに入って本格的。麻実さんや内野さんはさすがに、うまい。これは確かに人気が高いのは仕方がないか。演技の面でも段田安則さんらが入ったことによって、いつもの井上芝居(こまつ座など)の常連とはちがった味わいが出ていて、よかった。三人娘もなかなか新鮮。

最終部は終戦後に時間が飛んで、登場人物たちのその後が手紙によって語られて終わっていく。しかし「検索官」坪井のその後だけが不明である。ここにも何か深い意味があると思うのだが、自分が見落としたのか、理解が及ばなかった。

ぜひ二幕の脚本を強化した上で同じキャストで再演して欲しい。

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