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2005/05/16

KERA・MAP #003『砂の上の植物群』

多忙な中、舞台に足を運ぶ日々が戻ってきた。先週は3つの舞台に足を運んだ。まずは、水曜日のシアターアプルだ。常盤貴子の初舞台が、ケラマップである。なかなか渋いところをついている。客席には深津絵里さんがいたらしいが、焦って遅れかけで前方の席に入った自分は最後まで気がつかなかった。相変わらずの上演時間の長さなのに、観ている間は全く飽きない。本当に力のある作家だ。

観劇日:5月11日(水)19:00開演 8列
上演時間 約3時間15分(10分間の休憩を含む)

正統派ケラ芝居。グロテスクな狂気と暴力と諍いを描きながら、笑わせつづけ、なぜか嫌な気持ちにならないばかりか、どこか狂った登場人物たちがいとおしくなる瞬間がある。近未来。日本の航空機がどこかの島に墜落する。生き残った数人は現地在住の日本人に助けられ衣食住を与えられるが、本国への連絡はいつまでたってもつかない。

どうも日本は国際紛争に巻き込まれているようだ。さらには東京は大災害に・・・暗い終末的な未来図は、『消失』と同様だ。残された人々は、欲望のままに生きる者、狂い出す者、妄想にふける者、他人を非難する者・・やがて、喧嘩が起こり、ひとり、ひとりと命を失っていく。

それぞれのキャラクターが強烈で、役者もよくそれに応えている。男優では、漫才師ヨドムと現地人の二役が面白い温水洋一。テレビとはちがったエキセントリックで強いキャラクター。赤堀雅秋は、ケラ芝居特有の嫌なヤツ役をいかにもらしく演じる。渡辺いっけいは、軽くてずるい男の典型。女優陣では猫背椿と池谷のぶえが目立つ。猫背は男への狂気じみた愛憎が真に迫るし、池谷は、狂気と正気の間をさまよいながら、最後は切ないその孤独な生涯を感じさせる。

これだけ芸達者な俳優たちを一堂に観られる幸せ。筒井道隆と常盤貴子も悪くはない。まあ劇中のセリフにもあったが、常盤貴子があまりに美形なので、それをみるだけで、ほおーっとなってしまっている面もあるが。ぜひ、これからも舞台経験を積んで、いろいろな面を見せて欲しい。それだけの幅が出る可能性がある人だと思うのだが。

劇作についても満足。本当に飽きない芝居だ。國本(筒井)の妄想のなかの宇宙人がきぐるみで出てきたり、ヨドムの相方であるシズム君がすごい姿で出てきたり。西尾まりの汚れ役にも驚いた。最後の余韻ある終幕にも満足。未来から来たと言い張るマリィ(つぐみ)は、地面に突っ込んだまま長いこと放置されたロケットに乗って未来に脱出しようという。このロケットは地元の高校生が昔作ったオブジェか何かであると、劇中では語られていた。にもかかわらず國本がそれを修理すると(子ども時代に彼が拾って持ち続けていた機械の部品がそれを動かしたのか?)光と音をロケットは発する。

消崎(常磐)がそれにのっていこう、という。劇中で語られるセリフ(マリィは機内にいた)やスクリーンの字幕にあらわれる状況説明の語りを参照しながら、観客は、マリィが生き残った乗客の一人であり嘘をついていると判断する。しかし、それは確たる証拠があってのことではない。機内の目撃談は坊園(池谷)によってあいまいにされている。ほとんど信じることの難しい希望がそこにはある。しかしそれを信じてみるしかない。劇中人物と同様、観客も、信じることもできるし信じないこともできる。物語はどちらにも解釈できる。可能性は宙づりのまま、観客の前に差し出される。どちらを選び取ることもできる。

こういうところが実にケラらしく、すがすがしく感じる。芝居の面白さを堪能して、楽しかった。
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KERA・MAP #003『砂の上の植物群』
シアターアプル 2005年5月1日(日)〜5月14日(土)
観劇日:5月11日(水)19:00開演 8列
上演時間 約3時間15分(10分間の休憩を含む)

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:常盤貴子 筒井道隆 温水洋一 西尾まり 猫背椿 池谷のぶえ 赤堀雅秋 つぐみ 山本浩司 喜安浩平 渡辺いっけい

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