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2005/04/24

ポツドールvol.13『愛の渦』

公演毎にネットに悪評が書かれる「ポツドール」を初めて観に行った。TOPSという足の向きやすい劇場だったということもあるが、「性欲」ということに真っ向から取り組むらしきテーマにも興味をもったということもある。過去の作品がどうだったのかは知らないが、今回はなかなか面白く観た。

観劇日 4月22日(金) 19:30開演
上演時間約2時間20分(休憩なし)

これはいわゆる「大人のパーティー」というヤツらしい。店長に参加費を払って、どこかのマンションの一室に、見知らぬ男女が集まり、朝まで乱交パーティーを繰り広げる、という無認可の風俗の一種だろう。参加者はインターネットの広告を観て集まるらしい。男2万円、女1000円。若い人限定、という設定らしい。そこに8人の男女が集まってくる。

冒頭、ダンスミュージックが大音量でかかっているなか、次々と参加者が集まってくる。なかにはロン毛の店員の男と顔見知りの女もいて談笑している。が、ほとんどは知らない同士のようだ。人が店に入ってくるたび、何か会話が交わされるが、大音量の音楽のため、まったく聞こえない。なるほど、セリフを聞かせる、ということにはまったく重きを置いていないのだな、とこの芝居の姿勢を判断するが、うーん、これで最後までやられるとかなり厳しいな、と心配になってきたころ、暗転、1時間前に場面は戻る。

初めて訪ねたらしい、おとなしそうな女の子が店長と会話している。音楽はないが、またまた全くの日常会話のテンションとヴォリュームなので、後席からは確かにかなり聞きにくい。が、上に書いたような、店のシステムが、そこでわかってくる。「スケベでやりたくてやりたくてしょうがない人」だけが来るところだと店長は説明する。結局、その子も自分がいかに「スケベ」かを証明することができ、参加することになるのだが・・。

時間をおってパーティーの様子が描かれていく。最初はどうにもぎこちなく、会話もなく、取りつく島もない居心地の悪さが続き、次第に会話が交わされていくのだが、実際、こういう場所であれば、まったくこうであろうと思われるような、会話の始まり方(なぜか最初は女同士で話し始め、そこに男が言葉をはさもうとして、別の女と会話が始まっていく、というような)の描写がリアルである。各人の頭の中は「そのこと」だけがある、ということが逆説的に鮮明に伝わってくる。小声のセリフも多く後席からは聞こえず、前席からだけ笑いが起こるとちょっと嫌な気持ちになるが、セリフに重要性はないと考え、鷹揚に構えることにする。実際、人間の動きだけを見ていると、何か動物の群れ同士のふれあいのようで面白かったりもする。

やがて、カップルが成立し始ると、上の階に移動してコトが行われる。もちろん役者さんたちはタオルを巻いていて誰も完全な裸にはならないし(男がタオルをとりおとす、というシーンはあるが後ろ向きなのでどうなっているのかはよく見えなかった)、上の階は舞台から見えているがブラインドを下ろされて、あえぎ声しか聞こえない。一回戦が済んでも、まだお互いの気まずさが続き、会話ははずまない。

が、時間が経過し3時過ぎになると、もう皆がはじけている。店長と二人で別室に待機しているはずの店員も、店長と気まずいといって現れ、客たちと会話を交わす。そんななかで本音も出てきて、ある男はどうやら童貞であったらしく、ほとんどの女性に相手にされていないことが判明したり、ある女は美形だが、局部が異臭を放っているため感染症が疑われたり(こんな上品な言葉で表現されているわけではないが)そういう客を入れた店に対して文句をいってトラブルになりかけたりする男も出てくる。

このあたりの会話、出来事、が、まさに、なのである。つまり演劇的セリフのわかりやすさ、伝わりやすさといったものを廃してしまって、まったく日常生活の言語そのもの(と感じさせるなにか)なのである。映像作品のように、ひとつの会話がクローズアップされるということもない。多数の聞き取れない日常的会話と動作が同時に混在している。観ていて何回も、自分がそういう場に本当にいて、出来事を見聞きしているのではないか、という感覚に襲われた。

途中からはスワッピングのヤンキー夫婦も参加。しかし夫の方が嫉妬して結局退場。ここのところだけが多少受けを狙って作為的な感じもしたが、展開としては面白い。

やがて、明け方5時になりパーティーは終了。すでに疲れ眠っていた客もいるが、童貞君は最後までやりつづけ、かなり上達した様子に拍手が起こったりする。楽しかった時間の終わりが悲しくて泣き出す女も。なぜか全然アブノーマルとは思えなくなっている自分がいる。(いや、実際、本当のこういう場はもっとアブノーマルなのだろう、この芝居のなかではそれなりにソフトに表現されているとは思うのだが。)

印象的だったのは、店員がカーテンをあけると、明け方の陽の光が部屋のなかに入って一気に入ってくるのだが、この光の表現はすばらしい。本当に一晩空けた、その夜の非日常の時間を終わらせ、日常の世界に戻す陽の光そのものだった。夢の終わり。セリフにもあったが、夜中は局部をあけっぴろげに見せていた女も、恥じらいながら服を着替えている。

ここにあるのは、やはり「虚構」だ。リアルそのものではない。しかし、その「虚構」を通して、人間の一つの本性に肉薄したことは確かだと思う。キャラクター設定もひとりひとり綿密に作り込まれているように感じた。一晩の乱交騒ぎを演じた役者さんたち(役者が演じているようにみえないところがミソ)は結構スゴイと思う。
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ポツドールvol.13『愛の渦』
TEATER TOPS 2005年4月20日(水)〜27日(水)
観劇日 4月22日(金) 19:30開演
上演時間約2時間20分(休憩なし)

脚本・演出:三浦大輔
出演:安藤玉恵 米村亮太朗 小林康浩 仁志園泰博 古澤裕介 鷲尾英彰 富田恭史(jorro) 青木宏幸 岩本えり 遠藤留奈 小倉ちひろ 佐山和泉

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