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2005/04/18

『ルル〜破滅の微笑み〜』(北九州芸術劇場プロデュース)

昨年の音楽劇『ファウスト』に続いて、北九州芸術劇場が白井晃演出でプロデュースした作品。フランク・ヴェデキントが19世紀末から20世紀初頭に発表した『地霊』『パンドラの箱』という「ルル二部作」をひとつにして上演している。オペラや映画になって生き続けてきたいわゆる「運命の女」の物語。

観劇日 4月16日(土) 19:00開演
上演時間 約3時間5分(休憩15分を含む)

世田谷パブリックシアターは変幻自在な劇場だ。今回は舞台から座席側にぐっと張り出た長方形の舞台。白井演出らしく、落としぎみの照明と、舞台装置がすくなく、ホリゾントに大きな映像がときにうつされるというセンスある舞台美術。物語世界は原作よりも現代に近くパンフによれば1950〜60年代の設定のようだ。

構成は7つのACTとそれを繋げるIMAGEと称される部分、ここでは、井出茂太振付のダンス的な部分があったり、音楽・映像を担当したnidoの曲や映像が流れるなどで省略された物語の流れを象徴的に示しているようだった。ACT2のあとの歌手となったルルの歌う歌が印象的だった。これも芸術的センスが光る。

どの出演者も演技に安定感があり、メリハリもよく、たびたび話の流れが飛躍もするし、荒唐無稽でもあるのだが、それを感じさせず、奇妙に感じたルルの行動も、その出自が次第に明らかにされる過程で、深みを感じさせてくる。一幕は次々と男を破滅させながらも、豪華な生活を手に入れていくルル。しかし結婚しても、父親とされるシゴルヒとのつきあいは続き、新しい恋人をくわえ込み続ける。

その徹底した悪女?ぶりにむしろ爽快さを覚えていく半。しかし二幕ではルルは逃亡する女となる。彼女の育ての親であり関係を続けていたシェーンと結婚するが、嫉妬に狂うシェーンの銃で逆にシェーンを殺してしまったルルは、投獄されるが廻りの手助けにより脱獄し、シェーンの息子のアルヴァ(彼もルルの虜だ)と外国に逃げる。一度は安楽な生活を手に入れるが、株の暴落により一文無しになった一行は、ついにルルに娼婦をさせ、暮らしを立てなければならなくなる。

あっけない幕切れ。ルルは客としてとった殺し屋にナイフで切り裂かれ死んでしまう。原作に沿った展開なのだろうが、何か淋しい。「運命の女」譚なのだから、これでいいのだろうが、これだけまっすぐに欲望を追いかけ、逃げ続けたルルに一種の生命感すら感じていたので、最後まで生き延びて欲しかった。むしろ豪華な生活の頂点で死んで欲しかった、という気もする。

最後に殺し屋が切り取ったルルの肉片は子宮であろうか。「女」の象徴である陰部を切り裂かれる最期はまさに壮絶である。ルル役の秋山菜津子さんは、これが代表作となるのではないかと思わせる演技。つぎつぎと着替える衣装も、また映画のルルのイメージであるおかっぱ頭風のショートカットも魅力的だ。エロティシズムも蠱惑的な部分も、うまくバランスをとった出し過ぎない演技になっているところが、この演出にはちょうどよいのではないだろうか。

長く、結末は悲惨な物語であるのにも関わらず、かなり楽しめた舞台であった。
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『ルル〜破滅の微笑み〜』(北九州芸術劇場プロデュース)
世田谷パブリックシアター 2005年4月8日(金)〜17日(日)
観劇日 4月16日(土) 19:00開演
上演時間 約3時間5分(休憩15分を含む)

作:フランク・ヴェデキント(ルル二部作「地霊」「パンドラの箱」)
構成・演出:白井晃
脚本:能祖将夫
音楽・映像:nido(古谷建志、上杉俊佑、吉川寛、武田真治)
美術:松井るみ
振付:井手茂太
出演:秋山菜津子 古谷一行 根岸季衣 増沢望 浅野和之 小田豊 みのすけ 岸博之 石橋祐 まるの保

 

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