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2005/03/15

飛ぶ劇場『Red Room Radio』

北九州に本拠を持つ「飛ぶ劇場」は気になっていた劇団だ。昨年は東京国際芸術祭のリージョナルシアターに参加していて東京公演があったのだが見逃してしまい、夏になにげなくシアターテレビジョンで観た『生態系カズクン』『カズクン旅に出る』がかなり面白かったので、東京公演を期待していたのだ。

観劇日 3月13日(日) 15:00開演 I列左ブロック
上演時間 約2時間

今回は正直、あまり気持ちのよい内容の芝居ではなかった。作・演出の泊氏自身がパンフに「なかなかヒドイ話」と書いている通りだ。そして、ズシンと心の中に杭を打たれたような気持ちになって帰ってきた。リージョナルでアニミズムの匂いのした『カズクン』連作とはかなり違う世界がそこには展開されていた。しかし見終わってよく考えるとどこか通じるところもあるようだ。

なかなかセンスのよい舞台装置、題名をイメージした赤い大枠のフレームに、黒を基調とした抽象的なユニットがいくつか。上下左右に場面を分けている。ちょっと壊れた人たちの群像劇で、不気味に人が死んでいったりする内容も含めて一時期の「NYLON100℃」を彷彿とさせたり、最終部の滅亡が迫っているのに新たな出発をイメージしているところは「大人計画」の『エロスの果て』を思い出したりもした。

しかし「NYLON」や「大人計画」の終末が、どこか観客が別の世界として観られる枠に収まっているように感じられるのに対して、この芝居の終末は、なんだか他人事ではいられないところがある。温暖化で海面が上昇して、日本が沈み始めている。ウィルスか宇宙線かで、トリや動物が共食いをはじめる。食料は統制下にあり、特にウイルス感染していない肉はなかなか手に入らない。舞台は日本のどこかの島、そこにある海賊ラジオ放送、Red Room Radio。なんだかすぐにでも起こりそうな、手の届く終末なのである。K1で曙が負けたりしているのだからやっぱりこれは現在、今なのだ。泊氏はこれが「今、僕の観ている世界」であると書いている。そうか、これが「今」なのか。

無認可ラジオのリクエストを通じて、DJハルコのもとに集まってくる人たち。またその島の住人たち。すべてどこか壊れたおかしな人たちばかりだ。次々と現れる不気味な壊れた人たちはあまりに奇矯でちょっとひいてしまった。笑いもあるのだが、ひきの方が会場の雰囲気としては激しく、前半で会場が暖まりきらなかった嫌いがある。

最初にハルコのもとについたミルコは、生肉への執着で意気投合し、明るく恐ろしい計画を実行していく。人肉食といえば重くなる素材をかなりあっさり描いて、生け贄にされた人々もあっさりとコミカルに処理しているところがここの持ち味なのかな、とも思うが、すごい展開だ。

やがてミルコはハルコの夫センタの嫉妬の故に殺されハルコも殺されそうになるが、あっさりなぜかなかなおり。うーん、このへんはちょっとわからないが、クライマックスとも言える「千と千尋」の歌を歌いながらの殺人シーンは迫力があり見入ってしまった。

動物だけでなく、人間も共食いを始めるというあたり、それから、最後の方で、アブノーマルになっていく人間の行く末を「進化でも退化でもなく、変化」であるというあたり、どこかに人間も動物も自然も同じようなもので、宇宙の輪廻の一コマに過ぎないという世界観が見えるように思えた。そう、一見関係なく進んでいく、シャアとナオナオの挿話が新しい人類の誕生というテーマをさりげなくサポートしている。

ここの役者さんたち(特に女優さん)は本当にキャラが立っていて個性的。帽子王ロタコと三人のボーイフレンド?のグループはそれぞれが不気味さ全開でバランスがとれた面白さだったし壊れた中では壊れ方が一番わかりやすかった。その他では、ミルコ、プリシダが印象深かった。ニュースキャスターの一人芝居は、役者さんの芸としての面白さなのだろう、と観ていると最後に、このキャスターも海賊放送だったことがわかり、本当に一人芝居だったんだ、とひっくり返されるところも面白い。

ハルコのDJは懐かしの「中島みゆきのオールナイトニッポン」風。リクエスト曲も懐かしいものが。その「ニッポン放送」が話題を集めているだけに、メディアの現在・今後という問題も浮き上がってきた。「集まった要素をドロドロに煮込んで出来た」と泊氏が書いているが、確かに刺激物の強いヤミ鍋といったところだろうか。じわじわといまだに残っている。

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飛ぶ劇場『Red Room Radio』
東京芸術劇場小ホール2 2005年3月11日(金)〜13日(日)
観劇日 3月13日(日) 15:00開演 I列左ブロック
上演時間 約2時間

作・演出 泊篤志
出演 内田ゆみ 寺田剛史 橋本茜 北村功治 有門正太郎 鵜飼秋子 藤尾加代子 木村健二 加賀田浩二 桑島寿彦 権藤昌弘 内山ナオミ 葉山太司 門司智美 藤原達郎
声の出演 重松亜紀

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 東京国際芸術祭で、北九州市を本拠地に活動する「飛ぶ劇場」の「Red Room Radio」公演(3月11日-13日、東京芸術劇場小ホール2)が開かれました。 ... [続きを読む]

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