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2005/03/15

『お父さんの恋』(パルコ+サードステージ)

三寒四温に近くなってきたことを感じさせる暖かめの雨。なかなか気分が良い。Family Taleと副題にあるように、テレビドラマにでもありそうな感じの家族ものだった。季節に先立って、庭に満開の桜が咲く誇るどこかの海岸に近い家の中が舞台。

観劇日 3月11日(金) 19:00開演 F列左ブロック
上演時間 2時間45分(15分間の休憩を含む)

家族関係がだんだんと会話の中で明かされていく設定。一人ひとりの人物が丁寧に描かれていくこともあり、また全体に会話のテンポが遅いように感じられ、脳を刺激されまくる芝居を見ることが多いため、少し退屈に感じてしまった。わかりやすいのがいい人にはよい芝居だと思う。それから親を放り出している家族の話だから、ちょっと我が身につまされてしまうところもあって、なんとなくむずがゆい感じも。

母親が数年前になくなり、残された父も家を新築した直後に倒れていまや植物人間状態。三人の子どもはいずれも家を離れ、住み込みの介護ヘルパーが父親の面倒を見ている。ひさしぶりに母親の法事のために、お金持ちの家の主婦となった長姉とIT企業を起こし社長となった次姉、そして二十代で自己破産し今はニートの末っ子長男が集まってくる。

この若い介護ヘルパーと寝たきりの父親が結婚すると言い出す、という話だと聞いていて、お互い好きあって結婚するとか、父親の方が若い子にほれて結婚すると言い出すのか、そういう話だと思っていたら(だってチラシにそう書いてあるのだから)、そうではなく父親は植物状態で意識さえあるのかないのかわからなく、介護ヘルパーの娘が子供達に顧みられない父親に同情して結婚すると言い出すという話だった。もちろんそこには裏があるのだが…。

演劇的に面白いのは、父親が植物状態であるという設定だが、セリフを話すということ。幕開けでさおり(ヘルパー)が話しかけながら世話をすると、それに父親がそれに答えているため、単に寝たきりの病人なのだろう、と思うのだが、やがて家族と近所の医者が集まって交わす会話の中で、父親はまったくの植物人間だということがわかる。

父親の話していることは、父親の意識の中の言葉だったのだ。と今度はそう思う。だから父親の言葉は家族の誰にも聞こえない。ただ観客だけに聞こえている声になる。突然父親と結婚すると言い出したヘルパーと家族との間のトラブル。そしてヘルパーは家を去っていく。突然父親の車イスを残して去るヘルパーに対して父親は大声を上げてひきとめようとするのだが、このシーンの後、父親は声を出さなくなる。

やっぱり意識なんかなく本当の植物人間だったのか? 自分が聞いていた父親のセリフは、もしかしたら観客である自分が勝手に創造して、付け加えていた父親の気持ちだったのではないか? とそういうひっくり返されたような感覚を持ってしまったのだが、これは狙われた演出効果なのだろうか。いずれにしてもこの父親のセリフのあり方というのがこの芝居では最も面白いキモだったと思う。

演技では堺雅人はやはり安定しているし、池田成志はボケどころをおさえて手堅いなと思わされた。ヘルパー役の星野真理さんは、悪くはないがとても難しい役だと思う。別の目的を持ってヘルパーになったが父親に愛着を感じるという矛盾した部分がもう一つ実感を持って伝わらないのは、脚本・演出・演技、どのあたりの問題なのか、判然としなかった。
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『お父さんの恋』(パルコ+サードステージ)
パルコ劇場 2005年3月10日(木)〜27日(日)
観劇日 3月11日(金) 19:00開演 F列左ブロック
上演時間 2時間45分(15分間の休憩を含む)

作 中谷まゆみ
演出 板垣恭一
出演 堺雅人 星野真理 七瀬なつみ 菊池麻衣子 池田成志 前田吟

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