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2005/02/06

ベケット・ライブvol.6『クァクァ』

下北沢の「劇」小劇場にて。ベケット・ライブシリーズを初めて観る。終演後のロビーでちょっと耳に挟んだところでは、前回とはずいぶん趣を異にしたものだったようだ。

(観劇日 2月5日(土)15:00開演)
上演時間 約1時間30分くらい?

リーディング公演といったほうがよいのだろうか。右手後ろにぶら下がった小さめの液晶テレビと、台本らしき紙の束がゴムヒモのようなもので中央につるされているのと、床にスケートボードがおいてあるだけ。スケボーにはORENGEと書いてあるのだが、OREのところだけ色違いになっており、語り手か主人公らしき「オレ」は、登場する二人の役者のどちらかが、このスケボーに腹ばいになって乗りその役割となる。

出てきたのは灰色のつなぎを来た二人の女性の役者さんたち。客電も消えないまま、注意事項を説明しつつ、この作品が三部構成であることなどを話し始めるのだが、このあたりから普通の日本語ではなくなる。

今回はクァクァ(間) どんなか(間)  小説「事の次第」(間) ひどくマイナーほとんど知られず読まれず(間) 

↑これはちらしにあった作品の説明なので実際に話されたセリフではないけれど、だいたいこんな感じで語られていく。(間)はそんなに長くはない。抑揚や身ぶりがあるので、ひどくわからないことはないけれどこれに慣れるのはなかなか難しい。

もともとの小説が句読点がまったくない書き方なのだそうだが、それがこういった、助詞のない、統語法を無視したたどたどしい日本語として翻訳されている。印象的には、日本語の単語だけ覚えたが文法を知らない外国人(英語や中国語を母語とする)の話しぶりのような感じだ。

これで句読点のまったくない作品の原語の流れを彷彿とさせているのかはよくわからない。ただ聴くもの(観るもの)としては、もどかしさを感じるのでそれを味わえばよいのだろうか。あまりに不思議なことばの世界に入りかなり不安になる。

助けになるのは、常にメタ的なレベルの説明がはいってくれること。「これでやっと第一部「ピム以前」終わり」などという風に。これで今、物語のどの位置にいるのかが、わかるのでいったいいつどのように終わるのかわからない、という不安を静めてもらえる。役者さんがセリフを読みながら台本を一枚一枚リングからちぎってばらまいていくのも、作品内の自分の位置を知る上で助けになる。

肝心の内容は、もちろん不条理。泥と闇の中を旅?している「オレ」は「ピム」と名付けた人物に出会う。両方とも男のようだ。「オレ」は「ピム」に刺激(わき腹に爪を立てる、など)を与えて歌わせたり言葉を話させたりする。また全く違う過去か想像かわからない世界のイメージが語られそれがテレビに映されたりする時も。

これをどう評価してよいか、いまのところよくわからない。この泥と暗やみの中をさまよう極北の不条理の行き着いた世界が、解体された日本語によってしか表現できなくなっていることであろうか。

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ベケット・ライブvol.6 『クァクァ』
制作 スリーポイント
2005年2月2日(火)〜6日(日)・1日(月)プレビュー公演
(観劇日 2月5日(土)15:00開演)

原作 サミュエル・ベケット
演出 阿部初美/ドラマトゥルク 長島確
出演 鈴木理江子 井出みな子

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コメント

初めまして。興味深い劇評を愛読しています。

> もともとの小説が句読点がまったくない書き方

と聞けば、先ず思い浮かぶのがBeckettの師匠Joyceの『ユリシーズ』最後の挿話の文体です。延々と続くモリー・ブルームの意識の流れはつとに有名ですが、「ことの次第」はマイナー作品とのこと。よろしければ原題をお教え願えませんか。探して読んでみたくなりました。

ご紹介文からは『ユリシーズ』より『フィネガンズ・ウェイク』に近い印象を得ました。「不条理」とは、むしろ懐かしい響きです。こうもむちゃくちゃな世の中になってくると。2006年にはSamuel Beckett Festival, Tokyo 2006開催ですって?不条理の都にふさわしい祝祭ですね。

投稿: spoon | 2005/02/06 22:01

コメントありがとうございます。プロフィールには「文学専攻」と書いてありますが国文系なのでご指摘の系譜については知りませんでした。ご教示ありがとうございます。まあ国文系のこともあまり詳しくないんですけどね。

当日もらったキャスト表によれば、原題は、

Comment c'est/How it is

今回のドラマトゥルク、長島確さんによる翻訳題は

『どんなか』

総数860あるパラグラフのなかから、約130を抜粋して新訳を試みたそうです。既訳は、

『事の次第』片山昇訳、白水社、現在品切

とのこと。ご参考になりますやら。

投稿: BP | 2005/02/07 10:10


BlankPaperさま

コメントとトラックバックをいただき、ありがとうございました。

ベケットライブは、前回まで暗いトーンの舞台になっていて、今回は「気分転換」を図ったそうです。

また、『クァクァ』のクァは、擬音(擬声)を指し示す以外に、フランス語ではwhatを意味するそうです。

時間に追われていますので、思い付くかぎり、コメントした次第です。ご寛容ください。

投稿: 山関英人 | 2005/02/07 14:27


たびたびすみません。書き忘れました。

評価が定まらないとのことですが、

ベケットライブは、来年のベケット・イアーに向け、すでに昨年から準備を進めていて(劇場と助成が確定すれば)全国数カ所で公演を打つ予定です。

詳細が決まれば、私のブログでも紹介するつもりです。

投稿: 山関英人 | 2005/02/07 14:38

山関さん、お忙しいなかコメントありがとうございます。なるほど、昨年まではもっと暗い感じだったんですね。たしかに今回は、役者同士がじゃんけんをして読み手を決めるところがあったり、しぐさや読み方がコミカルであったりしました。声を上げてウケている方もいらっしゃいました。ピムとのやり取りもそうとうヘンで笑っちゃいます。

ベケットイヤーの情報もありがとうございます。ベケット・ライブ、今後も注目していこうかと思います。

投稿: BP | 2005/02/08 12:52

TBは、見てください。と、言わんばかりのツールなので、僕のエントリーの内容でTBするのには、躊躇があったのですが、ついついやってしまいました。実は、BPさんのブログ、頻繁に見ています。観覧量に処理がおいつかないのですが、分からないなりに、読み応えあります。いつか、実のあるコメントが書けるようにと思っていました。こちらこそ、よろしくです。

投稿: simon | 2005/02/12 12:14

simonさん

いえいえ、どうぞ気軽にコメント、TBしていただければと思います。このブログはとにかく観劇の記録を残すことを主眼にしていますので、まとまらず中途半端でもともとわかりにくいものもたくさんあると思います。お許しください。

この連休はまったく観劇しない予定なので新たなエントリーはないと思いますよ(笑)

投稿: BP | 2005/02/12 22:34

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下北沢の「劇」小劇場にて。三日(19:30-)に、かわいいふたりを連れて、三人で見に行った(笑)。三人の第一声は、分からないけどおもしろいだった。だが、書けなか... [続きを読む]

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