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2004/12/28

「リア王」 ー影法師ー

りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ第二弾。第一弾の「マクベス」と違って歌は少なめ。第一回に続いて斬新な演出アイディアがたくさん。衣裳も美しい。白石加代子の怪演全開。若い女優さんたちも上手い。にもかかわらずのめりこめなかったのは、リア王という物語自体の難しさなのだろうか。

能楽堂シェイクスピアは、2004年6月に青山の「銕仙会能楽研修所」での「マクベス」を観て以来、二回目だ。なぜか、シェイクスピアが能楽堂の空間に非常にマッチする。不思議なほどに、自然で、観るものに言葉がしみ込んでくるのだ。今回もその素晴らしさは変わらなかった。

マクベスでは、三人の魔女は、六人の少女の巫女になり、歌い踊ったのだが、今回は、リア王と三人の娘、そして道化以外は、三人の影法師と従者といった無個性な役柄になり、忠臣ケントやグロスター、娘のダンナ達、フランス王など、主要な役柄を吸収している。よって、物語の枝葉はそぎ落とされ、ドラマはリアと娘達の間のものとなる。

言葉はほぼ松岡和子の訳にしたがっているのであろう、むしろ現代的であるが、さまざまな能舞台の制約を使った、演出の面白さに感心する。たとえば、次女リーガンがリアの従者に足かせをかけてしまう場面では、桶のような小道具に、三人の従者が片足を入れるという形でそれを表現した。

マクベスでも魔女を巫女風の衣裳にしたりと、工夫があったが、今回の衣裳デザインはさらに目を引いた。色彩感が美しい。特に長女ゴネリルの衣装や、リアの様々な出で立ちも目を楽しませてくれた。

白石加代子を含めて、出演者はすべて女優というのも異例だ。なおかつパンフ(無料配布!)を見ると、白石以外の女優達はほぼ80年代後半生まれ。いまだ10代である。それなのに幼さや未熟さなどみじんも感じさせない演技。よほどの訓練を積んだのであろう。東京の小劇場の凡百の役者に見せてやりたくなる。彼女達はこれからどこでも通用するのではないか?末恐ろしい気がする。白石加代子もさすがの怪演で、後半笑いも誘っていた。白石さんにとっても全く未知の体験であり共演であったのではないか。シェイクスピアでは、蜷川演出の「夏の夜の夢」の演技が記憶に残っているが、さらにノッた演技であったと思う。アングラ演劇の女王を彷彿とさせた。

しかしながら個人的には、どうもこの「リア王」という物語には入り込めない。10月に、世田谷パブリックの「リア王の悲劇」を見た時もそうだったのだが、冒頭の部分ではどちらかというとリアの横暴が目立ち、娘達に共感してしまうからだ。ところが次第に物語は娘達の横暴を目立たせ始め、リアの境遇に共感を寄せようとする。そのあたりでどっちにも共感できなくなり、結局はリアは改心するでもなく、助けてくれた三女が謀略によって死ぬと、自分も命つきてしまう。結局はすべて老いの我儘と頑固さが災いしたというだけではないのか?

それともリアの側にも理があるのだろうか。このあたりシェイクスピアに無知なので、非常識なことを書いているかもしれない。が、現代的な感覚で観るとどうしてもそうなってしまう。「マクベス」や「「ハムレット」はかなり共感できる。「ロミオとジュリエット」でさえ、若い過ちとしてわからないでもない。が、「リア王」は難しい。これはまあ、個人的な感性の問題なのかな。自分にとって共感しにくい人間像なのかもしれない。

いずれにしろ、この能楽堂シェイクスピアシリーズは続いていくようだ。次々と面白いものを見せて欲しい。非常に楽しみなシリーズである。

1月14日追記:思い出しましたが、「能楽堂マクベス」のDVDを会場で販売していました。
値段は未確認。でも欲しいな。
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りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズ 第二弾
「リア王」ー影法師ー】
東京公演2004年12月25日〜12月28日 梅若能楽学院会館
観劇日12月28日(火)14:00開演
上演時間約2時間(休憩なし)

主催 (財)新潟市芸術文化振興財団
協力 メジャーリーグ

翻訳 松岡和子 
構成・演出 栗田芳宏 
作曲(ピアノ演奏) 宮川彬良 
衣装 時広真吾 
鳴物 親松仁

リア 白石加代子
ゴネリル 塚野夢美
リーガン 塚野星美
コーデリア 町屋美咲
道化 住田彩 
影法師 田島真裕美 横山道子 横山愛
従者 岡田光恵 清水ゆい

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受信: 2005/01/18 06:20

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